この「はじめに」では、最初にサカナの骨の名称や用語について一般的な立場から説明します。その上で、その後に専門用語も加えながら、サカナの「骨格系の俯瞰的な考え方」の概要を示します。
なお、構造に関わるポイント/繋がりなどは既に「骨パズルTop Page の「1-a」などに記載したので移動/復習してください(ココをクリックでそのサイトへ移動します)。
・・・・・・・・・・・・・・・・
<サカナの骨の用語について>
名前/名称/呼称/用語の必要性は「何事も呼び名がないと困るから」と言うことも確かですが、例えば、食品パック「切り身の肉」に部位名称のシール/ラベルがないと誰でも食べるのは嫌ですよね(名前や部位が分かるとなんとなく親しみが湧くのかな?)。
例えば「タイのタイ」とは胸ビレの起部「肩甲骨/烏口骨:けんこうこつ/うこうこつ」ですが、そのような呼び方/呼称(こしょう)があるとなんとなく「おめでタイ」、その周りのお肉を食べる時はなんとなく有難い/安心ですね。それで短絡的ですが名称/用語はとても重要です。つまり、大切なこと/印象深い事にはいつのまにか別名や愛称やアダ名が付いていることと同じです(言語の特徴です)。
つまり、専門用語が必要と言うより、その状況をなんとなく「構造:要素の配置とその繋がり」として理解するため。その状況を通訳/代弁するには名称/呼称があると何かと都合がよいという経緯が「用語」です(だと思っています)。
このテキストではたくさんの用語を記述しますが、それで、読み進める時は自己流の呼び方でも大丈夫。専門用語が必要な時は、その経験値に応じて、きっと正しく「後追いしている」はずと思っています。
なお、サカナの骨の名称を知って「何の役に立つの?」という意見もありますが、サカナもヒトもその「構造」を考える視座視点やその用語はほとんど同じなので、下記の用語は医学用語?と考えても良いと思っています。 では、次にサカナの骨の概要を俯瞰的に解説します。
補足:ガイコツ・ズガイコツなど、一般的な呼び方は様々ですが、解剖学的には頭骨/トウコツであり、あるいは、頭蓋/トウガイ・頭蓋骨/トウガイコツという呼び方を使います。
<魚類骨格系の俯瞰的/全体的な考え方>
はじめに基本区分に応じて用語を列記します。その次が解説です。つまり、用語に慣れるには音読が不可欠です(音読3唱・呪文だよ!)。
なお、その昔、外国語を日本語に言い換えてできた専門用語「漢字」は誰でも理解できる「方向や位置、形や状態」などを語源するので、その意味を考えてみることも時には必要です。
ちなみに、日本語で「対象」を言い表す視座視点は次の9項目程度です。1) 部位・2) 形状・3) 名称・4) 繋がり・5) 区分/構成・6) 役割・7) 仕組み・8) 由来・9) その他/感覚的な事。つまり「これは何?」って質問されたら「それは・・・の話ですね!」として扱う/共有が可能な枠組みです。多すぎる場合は「形・役割・仕組み・由来」と考えて下さい。学習に不可欠な枠組み/視座視点です。では次が音読三唱。
1. 神経頭蓋(しんけいとうがい)
@ 鼻殻域(びかくいき), A 眼窟部(がんかぶ), B 耳殻部(じかくぶ),
C 頭蓋頂(とうがいちょう), D 頭蓋底(とうがいてい), E 後頭部(こうとうぶ)
(詳細は目次項目Kに移動し参照です)
2. 内臓頭蓋(ないぞうとがい)
@ 口蓋部(こうがいぶ)、A 舌弓部(ぜっきゅうぶ)、B 上顎部(じょうがくぶ)、C 下顎部(かがくぶ)、D 鰓蓋部(さいがいぶ)、E 眼域部(がんいきぶ)
(上記の詳細も目次項目に移動し参照です)
3. 脊椎(せきちゅう) とその周囲
@ 脊柱(せきちゅう)、A 脊索(せきさく)、C 脊椎骨(せきついこつ)=腹椎(ふくつい)+尾椎(びつい)、D 肋骨(ろっこつ)
この「脊柱/背骨」付近の話/説明は下記の概要解説だけです(今回は上半身の話です)。
4. 附属骨格(ふぞくこっかく)
a. 肩帯部/けんたいぶ(胸ヒレに関わる骨)
@ 後側頭骨(こうそくとうこつ)、A 上側頭骨(じょうそくとうこつ)、B 上擬鎖骨(じょうぎさこつ)、C 擬鎖骨(ぎさこつ)、D 後擬鎖骨(こうぎさこつ)、E 肩甲骨(けんこうこつ)、F 烏口骨(うこうこつ)、G 射出骨(しゃしゅつこつ)
b. 腰帯部/ようたいぶ(腹ヒレに関わる骨)
腰帯(ようたい)
c. 鰭骨格(ひれこっかく)
左右対称の対鰭(ついき)、つまり、胸鰭(きょうき/ムナビレ)と腹鰭(ふっき/ハラビレ)の起部は、四肢骨格(ししこっかく:陸上動物の手足)と同じように上記の肩帯(けんたい)と腰帯(ようたい)です。サカナの場合、その肩帯と腰帯に「鰭/ヒレそのもの」が繋がっています。その鰭は鰭骨(ひれこつ)の配列、つまり、太い棘のような棘条(きょくじょう)とやわらかい軟条(なんじょう)が配置し形を示します。
真ん中つまり正中面(せいちゅうめん)にある一つだけの鰭は、背鰭(はいき/セビレ), 臀鰭(でんき/シリビレ), 尾鰭(びき/オビレ)が基本です。それらを不対鰭(ふついき)と呼びます。不対鰭も対鰭と同様にそのヒレは棘条と軟条で形作られています。なお、不対鰭は体内に埋もれた担鰭骨(たんきこつ)が鰭骨の根元を支持します(上図を参照ですが、煮魚を食べた時に確認してね!)。
以上が骨格系の基本用語。時間がある時には漢字の意味も確認(身近な先生などに聞いてみることは有意義です!)。では、次は「コツ骨コツの概要説明」です。難しく思う時は無視してください(必要に応じて適当に読んでね!)。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
解説(かいせつ):魚類の骨格系/系統(こっかくけい/けいとう:skeletal system スケレタル スィステム)は、ヒトと同様に 内骨格(ないこっかく:endoskeleton エンドスケルトン)です。昆虫(こんちゅう)やエビカニなど硬い外皮(がいひ)を持つ甲殻類(こうかくるい)は外骨格(外骨格動物)です。
魚類の骨格系(内骨格)は、頭骨(とうこつ)と脊柱 (せきちゅう)が中軸骨格 (ちゅうじくこっかく:axial skeleton アクシアル スケルトン)、それに肋骨(ろっこつ:rib リブ)や鰭(ひれ:fin フィン)やその基部を作る骨、つまり、付属骨格(ふぞくこっかく:appendicular skeleton アペンディキュラ スケルトン)が加わり、骨格系全体が構成されます。
〔骨格系=中軸骨格+付属骨格〕
補足:昆虫やエビ/カニはキチン質でできた外骨格。軟体動物(なんたいどうぶつ)のタコ/イカには硬骨(こうこつ)はないけど軟骨(なんこつ)や甲(こう)がある。それらはヒトの骨と同じように結合組織(けつごうそしき)の成分です。ヒトの骨の多くはその最初は軟骨であり、その後に硬骨に置き替わります。そのことを軟骨性骨化(なんこつせいこっか)と呼びます。
硬骨(こうこつ:Bone ボーン)と軟骨(なんこつ:Cartilage カーティレッジ)には「骨」という字を用いますが、その主成分は全く違います(骨はコラーゲン線維とカルシウム、軟骨は透明なコンドロイチン硫酸などの糖蛋白が主成分)。つまり、軟骨が硬骨に置き換わる時には軟骨の周囲から細胞性の変化が生じます。
なお、骨は骨細胞が生み出すコラーゲン線維にカルシウムが密に結合したもの。例えば、酸などを用い骨からCaを全て除いても形は変わりません(コラーゲン線維は溶けないのでその形が残るため)。
なお、サカナの鱗/ウロコ(音読みでリン)は硬骨です(皮膚に埋もれた骨がウロコ)。それで生きている健康なサカナのウロコは直接さわることができません。ウロコの周りにはたくさんの色素細胞があるのでサカナはカラーバージョンが多彩です。
ちなみに、爪や髪の毛、亀の甲羅の上の角質の主成分はケラチン質(骨とは違い燃やすと臭いイオウ臭がします)。重複しますが、ウロコも含め骨は体から露出していません。ウロコのオモテ側には細胞層(上皮組織/ジョウヒソシキ)が覆っています。
鹿の角のように季節的に骨が露出する動物もいます。歯の表面のエナメル質は骨成分ではなく上皮細胞が分泌した成分と言われています。つまり、体は細胞シート(上皮組織)で包まれた構造体です。そのとっても薄い細胞層はウラ側の結合組織の成分(コラーゲン線維やウロコ)などで裏打ちされています(たぶん疑問がたくさん生まれてると思いますがその疑問は大切です!)。
また、骨格標本などを見ると「骨は白っぽい骨色」をしていますが、新鮮な骨は不思議なほどにかなり透明です。煮魚の骨も新鮮な場合は同様ですが、体外に取り出す、あるいは、加工すると水分などが変化し白っぽくなります。また、骨には脂肪分も含まれているので、空気に触れると徐々に酸化し茶褐色に変化します。
サカナの色について:体内の色は、黒っぽいメラニン色素(しきそ)、赤っぽいヘモグロビンとミオグロビン、緑の胆汁色素(たんじゅうしきそ:ビリルビン:これが壊れるとウンチの色)、深海魚などの目の奥の銀色のグアニン色素(腹腔内壁の銀色も)、あるいは、体外から取り込んだアスタキサンチン(サケの赤み肉の色)だけなので、その他は基本的には組織学的には無色?です。なお、体色はウロコ周辺にある色素細胞(5種類?の色素顆粒:黒・白・赤・黄・虹)の色です。ちなみに、エビカニなどの血液はヘモシアニンのため水色?。
下図は本編で取り上げる頭部骨格系の領域区分です。模式図の上をタップでその項目へ移動します(その部位の名称一覧と補足説明を列記します)。